卒園おめでとうございます。

 15年の時を経て沖縄から持ってきた桜の苗木に 花がさきました。3月に沖縄の研修旅行に行ったとき、戦跡の壕の中から出たところで手渡されたのです。「沖縄のさくらんぼです、育ててみませんか?」と。気候が違うので育つかなと思いつつ、どんな花が咲くのだろうとの思いが上回り、つい受け取ってしまいました。それから毎年葉を茂らせ、紅葉を繰り返し、幹も太くなって周りの木に負けないほどになりました。それでも花は咲きません。業を煮やした私は剪定と称して花が咲かないのなら全部切ってしまうよ。なんとしばらくしたある日桜の枝にピンク色の花をつけました。とてもうれしくて合う人ごとにお知らせをしました。名前は寒緋桜だそうで実は食べられると書かれていました。今は欲が出てさくらんぼのできるのを楽しみにしています。あるべき姿になるために一つ一つに決められた時間があることを改めて感じました。卒園した子どもたち一人一人にもできるようになるための各々に違った時間が用意されていると思います。その時を焦らずに待ちたいと思います。子どもたちはやってみよう、最後までやる抜く、思いやる、力を合わせる事など多くのことを自分のものにしました。どんなことがあっても時間がかかっても乗り越えられると信じています。いつでも遊びに来てください

園庭をまわっていると毎年変わらず芽吹く草花に安心したり、こんなところへなぜ?と考え込んだり、寒い中を頑張ったのねと愛おしく思ったりします。寒さを耐えて迎える春だからこそ誰もが希望を持つのでしょう。子どもたちの植えたチューリップが芽を出し始めました。嬉しそうに見にくる子たちはどんな色の花が咲くかを「私は赤、僕は黄色、えー覚えてない。」「手を花に見立ててこんな大きいのが咲いたらどうする。」「花びらがたくさんだったら。」「先生くらい大きかったら。」と楽しそうに話しています。想像を働かせている時の子どもたちは生き生きとしていて話はどんどん広がっていきます。本来子どもたちの目の前には知りたい事、見たい事、聞きたい事がたくさんあると思います。その思いを実現させてあげたいと親は思います。そのためには情報の多い今、大人は選択する目を養わなければなりません。情報源はどこからか、だれが言っているか、何を言いたいか、どうしたいかをよく吟味して取るべき行動を考えられればと思います。そして、子どもたちにそのことをどう伝えるかを思案する必要があります。大切なことを伝えるとき相手の使っている言葉や知っている言葉は何かを知ることは大事な事です。普段使っていない言葉で話されても理解することは難しいでしょう。知っている言葉に新しい言葉をつなげて知識を広げていくのではないでしょうか。子どもの生活に根差した言葉を大切していきたいと思います。子どもの日々の成長には大人のかかわり方が大きく影響していきます。親自身が子どもと共に成長したと言えるといいですね。一年間を感謝します。
    (「2022年度3月めぐみだより」より)

2022年も残り少なくなってきました。コロナ感染症とも上手に付き合えるようになってきているようです。「見える化」が当たり前のようになっている今、聞くことの大切さに目を向けていきたいと考えます。小さな「コトッ」という音と「ガタン」という大きな音の間にどれだけ多くの物語が詰まっているかと想像すると楽しくなります。音は想像力を掻き立てます。耳慣れた音にはさほど反応しませんが聴きなれない音だと「何だろう」と思い、「何が起きたのか」「どうなっているか」を想像します。いわゆる非認知能力のひとつの大事な感覚を育てるのです。鳥の声、風の音、水の流れの音、葉っぱの落ちる音、雨の音など自然の中の音を聞くことも楽しく有意義な事です。子どもと一緒に音当てクイズをするのもいいですね。喧騒の中から抜け出し、静かな時間を持つのも必要な事なのではと思います。   12月12日             

暑中お見舞い申し上げます。

気候変動によって地球上で多くの変化がおきています。「気象病」という言葉に納得している自分がいます。モヤモヤとした気持ちの解決策をもとめています。 子どもたちはそのような中にあっても一学期を楽しく元気に過ごせました。あゆつかみはたくさんのあゆに驚いたり、怖がったりしながらも時間とともに追いかけまわし捕まえられたことに大喜びする姿がみられました。お昼ご飯にアユの塩焼きを食べました。自分で捕まえた魚を食べる事によって命について子どもなりに考えられたのでは思います。忍者修行を体験した年長さんは園の中で再現しようと試行錯誤し年中少さんと一緒に遊ぶ姿もみられました。粉粘土の遊びではいつも使っている粘土との違いや全身で遊ぶことによって解放感に満たされた笑顔にあふれていました。一学期最後のお泊りは大朝にでかけました。泣きたい気持ちをぐっとこらえてバスに乗り込みお母さんに手を振る姿もさることながら送る側の気持ちはいかばかりかと思います。友だちとのわずか一晩の経験は二学期につながっていきます。川遊びやかえるやバッタ、めだかやオタマジャクシなどなど。子どもたちの五官は開き、夢中になっている姿は本来の子どもはこうなのではと思います。夜の体験は中々なもので蛍に出迎えられ、満天の星を首が痛くなるまで見上げたり、最後は花火。各々寝る場所を決め、おやすみなさい。次の朝は鳥の声で目覚め、朝食後森へ散歩へ出かけました。大きな木に隠れたり、倒木に乗ったり、笹船を作って流したりと自然を満喫しました。暑い夏、生活リズムをなるべく崩さずにお過ごしください。
                7月24日

わたしの姿を見つけてAくんが走ってきて「園長先生、梅の実を見つけたよ。」「よく見つけたね。今年は実がならないなと諦めていたのよ。」「イチョウの木に登ったら見えたんだよ。」得意そうにイチョウの木の下に私を連れていき指さして「ほら、あそこだよ。」たしかに葉っぱに紛れて緑の実が一つなっていました。木登りに挑戦していた時は周りに目を向ける余裕もなかったのが登れるようになった時木の枝に座って周りを楽しむことができたのだと思います。目線を変えた時見える物も見え方も違ってくるという事をAくんは知ったのではと思います。このように遊びながら多くのことを学んでいきます。机に「座って学ぶ事も必要ですが体験することによってより自分のものになっていくでしょう。大学の教授の方と話をしていて近頃の学生は社会に出た時に応用できない人が多いと言っていました。たぶん遊びの体験が少ないことから起きる事なのではと考えます。理屈はわかるけれど、方法がわからないという事でしょうか。遊びは試行錯誤する中で広がったり、偶然が重なったりして最終的には「面白かったね。」で終わるのです。    6月13日

「やってみよう」と心を決めるときはどういうときなのだろうか。一人一人お思いがあって行動につながっていくと思います。もしかして大人よりもずっと考えていることもあるのではないでしょうか子どもの気持ちになってみることも大事かもしれません。やろうかどうしようかと思っている場合どうしたらうまくできるだろうかと考えている場合、どのタイミングで始めようかと様子をうかがっている時などが考えられます。親の思いではなかなか計り知れない場合が多くみられます。我が子の性格を知ることである程度は解決がつきます。どういう言葉をかけたらよいかもわかるので「やってみる」ことがスムースにできるでしょう。何事も待つことが大事といわれますが待つ方に工夫がいると思います。こどもがあれこれ考えるように大人もいろいろ考える必要があるでしょう。生命の誕生や植物の芽生えを通して、「神秘さ」と「大切にしなければという思い」を強くします。人間に委ねられたものをなくさずに次の世代に手渡していくには何をどうすればいいかを大人が考え、行動する必要があるでしょう。
  (「2022年度6月めぐみだより」より)

つい2週間前までは小さかったイチョウの葉がすっかり幹を隠すほどの青葉の季節になりました。それぞれに居場所を見つけて遊び始めています。安心できる場所を提供することによって「やってみよう」と動き始めます。一人遊びから隣にいる友だちや同じ遊びをしている友だちとのかかわりを求めて「一緒に遊ぼう」と声をかけるようになります。異年齢のお友達にも気を配り教えてあげたり、教えられたりの関係が出来ていきます。二人乗りの三輪車にずっと乗っている年少さんに代わってほしい年長さんがどうしたらいいかと悩んでいます。どうするのかなとみていると私に「私も乗りたいのに○○ちゃんはずっと乗っている。」「代わってって言ってみたら」というもなかなか決心がつかない様子だったが思い切ったように「代わって」と遠慮がちにいうが代わってもらえないでいました。しばらく考えて今度は「園庭を一周したら変わることにしようよ。○○ちゃん回ってきたら交代ね。」と相手にもわかるように条件を出して変わってもらっていました。さすが年長児と感心しました。無理に取りあげることなく、お互いに納得して遊べることは大事な事です。この年長児の対応の仕方は年少さんに引き継がれていくでしょう。人とのかかわり方を遊びの中で学んでいますよ。  (「2022年度5月めぐみだより」より)

一年を終えてしみじみと大きくなったなと思います。保護者の方に「どういう所が大きくなったと思われましたか?」の問いに皆さん答えてくださいました。身体的な面、活動でできるようになった事などたくさん書いて下さいました。一番多いことは「我慢ができるようになった。」「やって見ようと挑戦するようになりました。」「譲れるようになった。」「自分で行く準備ができるようになった。」「話が聞けるようになった。」「お友達のことを考えられるようになった。」「最後までやり遂げられるようになった。」など心の育ちについての言葉が多く寄せられました。友達や大人との信頼関係の中で思い切り園生活を楽しんだのだと嬉しく思います。子どもたちが一人ずつ植えたチューリップがつぼみを上げ、花をさかせはじめています。植えたのは同時だったのに咲く時期はそれぞれです。自然界でのこととしてではなく、子どもたちにもそれぞれ花咲く時があることを憶えたいと思います。焦らず子どもに寄り添って歩いていきたいと思います。ありがとうございます。        (2022年3月)